Steelwood Family design by Ronan and Erwan Bouroullec
スチールと木、２つ素材で構成されたSteelwood Chair
パリを拠点に活動する兄弟ユニットRonan and Erwan Bouroullec（ロナン＆エルワン ブルレック）により2008年にデザインされたSteelwood Chairは、その名の通りスチールと木という伝統的とも言える２つ素材で構成されたチェアです。長い年月を経て繊細に変化する風合いと、それにより得ることのできる深い愛着を目指して開発されました。インダストリアルな印象を与えつつもシンプルなフォルムにより、ホーム空間のみならずパブリックスペースなどあらゆる場所で快適に使用することのできる一脚です。
１枚のスチールプレートから生まれる繊細なフォルム
約10段階もの工程を経て成形されるSteelwood Chairの背もたれ
美しく湾曲した背もたれは、１枚のスチールプレートから打ち抜きや曲げ加工など約10段階もの工程を経て成形されています。緻密に計算された曲率によって導き出されたこのフレームの線と面は、開発における技術的な探求プロセスから生まれたものです。繊細に仕上げられた細部のディテールや全体の研ぎ澄まされたフォルムから高い技術力を垣間見ることができます。
１枚のスチールプレートから打ち抜かれる
緻密に計算された曲げ加工
ドローイングに忠実に製品化された極めて稀なプロジェクト
ブルレック兄弟による設計プロセスは、ドローイングから3Dモデリングを起こした後、モデルを製作。さらにいくつかのプロトタイプを製作し、再びモデリングからドローイングへと戻ります。コンセプト面ではそれぞれ異なる各プロジェクトでも、このプロセスは変わりません。
「このSteelwood Chairのプロジェクトにおいて非常に驚くべきことは、ドローイングからプロトタイプの製作まで至る長く興味深い過程から生まれた最終段階が、当初のドローイングに忠実かつ正確であったこと」と彼らは語ります。
Ronan and Erwan Bouroullec 図録より
他のプロジェクトでは、モデルによってプロジェクトが進化するケースが多々ありますが、このSteelwood Chairの開発プロセスでは、モデル、プロトタイピング、レンダリングのステップを最終的に完成図面に近づけることを目的として進められました。
また実はこのプロジェクトにおいてブルレック兄弟自身はモデル製作を行っていません。これは極めてまれなケースなのですが、モデルのための情報は随時、Magisに送られて進行しました。スチールウッドの開発では、何よりもドローイングが最重要なものとして扱われたのです。
こうして全体の形状、快適性、仕上げで、すべての詳細を調整するのに非常に長い時間を要して製作されたプロトタイプは約7〜8点。そこから最終的なフォルムや仕上げを導き出すためにmm単位で修正され、一脚のチェアが誕生したのです。
優れたスチールの加工技術の集大成 Steelwood Family
2008年の発表以来、Steelwood Chairはコンパッソ・ドーロ賞の受賞（2011年）をはじめ、世界において数多くのデザイン賞を獲得しています。また、2009年にはSteelwood Table、Shelving System、2010年にはSteelwood StoolとCoat Standが発表され、チェアと同様のスチールのジョイント構造をもつシリーズとしてファミリー展開されました。Steelwoodシリーズは、優れたスチールの加工技術が誇る集大成のデザインとして、世界的に高い評価を得ている作品です。
Ronan & Erwan Bouroullec | ロナン＆エルワン ブルレック
ロナン・ブルレック（1971年生まれ）とエルワン・ブルレック（1976年生まれ）によるフランス、パリを拠点に活動する兄弟ユニット。
1997年、パリのサロン・デュ・ミーブルにて「ディスインテグレーテッド・キッチン」を発表。イタリアの家具ブランド、Cappellini社の当時の代表ジュリオ・カッペリーニの目に止まり、その後、世界的に注目を浴びる。 2004年からMagisとの取り組みが始まり、StripedとSteelwoodの2つの家具コレクションを発表。以降、Magisにおいて重要な存在として様々なプロジェクトを共に進行している。
Magisの他には、Vitra、Kvadrat、Kartell、Alessi、Cappellini、Mattiazzi、Flos、Hay、Glas Italia、iittalaなど世界のブランドから作品を発表。また、2001年からパリのギャラリー・クレオにおいても実験的な活動を行っている。また近年では、建築などの大規模なプロジェクトにも着手。その活動の場をさらに広げている。